頑張りすぎて疲れたときに。
心に添えたい「柔らかい3つの言葉」
「ごめん、言いすぎたよ…。ほんと、ごめん…あっ?」
ある日乗り込んだ地下鉄の電車で、筆者の隣にいた若い男性が、イヤホンマイクで誰かと話しをしていていました。
考えてみるとここ数年、携帯電話を耳に当てて電話をしている人を見かけることが、少なくなりました。
独り言をつぶやいているように見えて、実はスマートフォンで誰かと通話をしている人が増えてきたように感じます。
長電話はハンズフリーのほうが便利だし、手が空くので作業をしながら話すこともできます。
先ほどの若い男性も、街を歩きながらハンズフリーで会話をして、そのまま地下鉄の電車に乗ったのでしょう。
最後の「…あっ?」は想像ですが、電話の相手からいきなり回線を切断されてしまったようでした。
そしてしばらく電車で肩を並べて居合わせて立っていた隣のその彼は、
「あっ?」のあと、
「えみちゃん?あれ?!」
と、画面を確認しながら、スマートフォンに向かって話しかけていました。
えみちゃんは、その彼の恋人でしょうか。
流れから察すると、彼は彼女を怒らせてしまい、一方的に電話回線を切られてしまったのかもしれません。
スタート早々に燃え尽きてしまう?
五月病という症状があります。起源は1960年代頃に当時の大学生が、受験、合格、入学、と頑張り続けた緊張感で、新しい生活が始まって間もない5月あたりに、心と体に不調を感じて大学に通えなくなってしまった由来から、そのように呼ばれるようになったそうです。
燃え尽き症候群に陥りやすい人は、無理をしてしまう癖を持つ真面目な人だと言われています。
この燃え尽き症候群のかたが発症する五月病は、最近は、「適応障害」という枠に入る傾向があるとのこと。
みなさんの周りにも、そんな人はいませんか?
真面目な人は正直です。
あれこれと考え過ぎてしまい、言っても差し支えないことを言えないまま抑え込んでいたり、言わないでおいたほうがよいことを、正直さから黙っていられなかったり。
この記事を読んでくださっているみなさん自身が、もし頑張りすぎて疲れてしまった出来事が過去にあったとしたら、その時はもしかしたら五月病が引き起こっていたのかもしれません。
5月18日は「ことばの日」。「言葉」の力を考えてみよう
5月18日は「ことばの日」なのですが、あまり認知されていないかもしれません。筆者も、講師業を始めてから知りました。4つのものは帰ってこない
1.口から出た言葉
2.放たれた矢
3.過去の生活
4.失った機会
アラビアのこの格言、とても言い得て妙なので、筆者がセミナーでも時折ご紹介をしているのですが、恋人のえみちゃんが、彼の発言から怒りを感じたのだとしたら、彼の言葉はこの格言の1.に該当します。
言葉を聞いて感じた印象は、人から人へ、記憶から記憶へ、光と同じように伝わります。
そして、言葉の中に発言した人の価値観が宿っているという考えかたから、「言霊(ことだま)」というとらえかたもあります。
言葉には霊的な力が宿るという言い伝えが日本では万葉の時代からありました。
また、「言葉」の語源は、「言の葉」とされています。
古今和歌集のなかで、
「和歌とは、人の中にある心を種にして、葉が生い茂るかのように増えて、言の葉となったものだ」と表現されています。
さらに、いにしえの時代には言と事はおなじ「こと」と表され、「ことの葉」「ことの端」のいずれにも解釈されていたようです。
口から出た言葉は、事の発端を引き起こし、その言葉は枝葉を伝い生い茂る木々となります。
そして自分が口から発した言葉は、相手の心に根付く種になって葉が広がります。
その葉がまた他の人にも種となり、つながっていく…
こんな風に考えると、言葉の影響力は大きいのです。
もし、電車で隣り合わせたあの彼がしばらくして、えみちゃんに再び会うことができたとき、えみちゃんの心に優しく響く「ことのは」で寄り添うことができたなら、ふたりの未来の「できごと」も変わるのでしょう。
5月は立ち止まりましょう
口から出た言葉を取り消したり取り戻すことはできませんが、もしかしたら風が吹いてきて、その葉を運んでくれることを願います。
えみちゃんの記憶が少し、薄れるまであの彼が時間をおいて待つことができたら、ふたりの間に風が引き起こるかもしれません。
5月、頑張りすぎて疲れてしまったら立ち止まり、心に柔らかい種をそっと置きましょう。
種に添える言葉には、次の3つがおすすめです。
*「大丈夫」
*「今、できることをやろう」
*「3年後のわたしも、きっと私を愛せている」
気負わない、柔らかい言葉は心を柔軟にしてくれます。
「頑張る!やればできる!やるしかない!」
このような緊張感のある言葉はまるで、不安と恐怖心の種と化し、その木の影が心を覆い尽くしてしまう一枚の葉のようです。
五月病を引き起こしやすいこの季節は、言葉の力を借りてあなたの葉を輝かせていきましょう。
その枝葉の下は心地よい木陰となり、あなたの大切な人も癒されるかもしれません。