あなたの心に「傘」を差し出してくれる人はいますか?



6月は雨の季節です。
壁のカレンダーも、空や緑の写真から紫陽花や霧深い風景に変わりました。
ここ最近は湿度の高い蒸し暑い空気が、初夏の前ぶれの灰色の空から降って来るかのようです。

この季節を「梅の雨」と書くのは、梅の果実が熟れることから生まれた言葉だと言われています。
梅の花が咲き始めるのは早くて1月ですが、その実も完熟期を迎えて、もうすぐで1年の半分が過ぎようとしています。
これから先は長袖の洋服たちも、そろそろクローゼットの中で、しばらく木々の色が変わるまでは出番待ちになりそうです。

そして、不機嫌な空の日が続くこの季節は、少しの外出にも天気予報が気になりますね。
そんな気分を感じながら歩いていた先日の曇りの午後、バスの停留所沿いの白いブロック塀に相合傘のマークの小さな落書きを見かけました。

落書きの位置から、書いたのは小学生のような気がしました。
落書きはいけないことですが、久しぶりに相合傘のマークを見て、微笑ましい気持ちになりました。
相合傘の落書きには、ちょっとした秘密めいた告白や暗示のメッセージを感じます。

相合傘は「親密さ」のシンボル



バス停と言えば…数年前のことです。
仕事で出向いた近畿地方の小さな町で、小雨の降るなか私は、バスを待っていました。
バスが到着して、後方から乗車しようとしていた時に、前方から降りて来た若い男女が、相合傘で歩いて行きました。
男性が差す広くて大きめな傘の下、私は、女性が片手にもう1本、傘を持っていることに目を止めました。
くるりときれいに巻かれたその細い傘の色は、とても鮮やかなブリリアントブルーでした。

傘が2本あるのに、ひとつの傘に収まって歩く様子から、ふたりは親しい間柄なのだろうな、と感じました。
筆者の仕事である実践心理学の授業では、親しみを感じあうことが、人間関係の構築の基礎には欠かせないこと、とお伝えしています。
相合傘は多分、ふたりの距離が近くて親しい証です。

あるいは、そのふたりが、今はまだ友達の関係だったとしても、誰かとひとつの傘に入って雨の中を歩くと、その相手に親近感を抱くようになります。
それが異性でなくても、その人が自分を受け入れてくれていて、その人のことを信じられるような穏やかな空気が、開いた傘の下に一瞬だけ、ふわっと浮かび上がるような気がします。

実際にはひとりで傘を差して歩くほうが濡れずに済むのですが、相合傘は相手と一緒に安全を共有している一体感が得られます。
みなさんには、ひとつの傘で一緒に歩くことができる人はいますか?

傘の所有数はひとりあたり3.6本

2017年に気象情報会社のウェザーニュースが実施した傘の調査(全国述べ約73,000人のウェザーニュース会員対象の調査)では、ひとりあたりの傘の所有数は全国平均3.6本とのこと。

いつも使う傘がもし使えなかったときの予備の傘があったり、職場などに置き傘をしてある人が多いのかもしれません。そしてその傘は、シチュエーションによって使い分けしているのではないでしょうか。

大雨用、小雨用では傘の柄の長さと面積が異なります。大雨の日に小さな傘では間に合いません。また、折りたたみの傘がその3.6本のうちに入るかたもいらっしゃるでしょう。

あなたの、傘になってくれる人は誰でしょう?

人の心と空は似ています。
あなたの心に、傷みしみるような、涙の雨が降りそそぐとき…そっとあなたに傘を差し出してくれる、そんな友人や知人も傘と同じように、3人いたら救われるかもしれません。



心の雨は急に、夕立のように降ることもあるでしょう。
職場の知り合い、古い友人、趣味の仲間のひとりなど、頻繁に会うわけではないけれど、あなたに手を差し伸べてくれる人の存在は、困ったときに救われる、急な雨の日の傘のようです。

大きな傘、小さな傘、それがどんな傘だったとしても、傘を差し出してくれた行為に私たちは感謝を感じて、心が安らぐでしょう。

そんなふうにあなたの心に降る雨の様子を察してくれて、そっと傘を差し出してくれるような、あなたの傘になってくれる人は何人いますか?

この梅雨の季節があなたにとって、そんな人の "大切さ" を傘をさしながら、ふと思いを巡らせてみる機会になればと思います。